1~2月のSAIJI-KI
1~2月に書かれたネイバーさんへのメッセージ

太田淳志
# Town SAIJI-KI 090:勝ち筋について③
さて前回は「両利きの経営」引っ張り出してきて今後の「勝ち筋」の論理的な視座で話を進めましたが、今回は具体例を挙げてきましょう。
まずなべさんです。なべさんの焼肉店のお話です。現状店内では「T1」と言われる(「TG01」の方がわかりやすいかもしれませんので今回は「TG01」とします)ターゲットの顧客化に取り組んできました。「TG01」の特徴は
・客単価が4,000円以上
・希少部位をオーダー
・アルコールをオーダー
のどれか、もしくは複数の要件を満たす、店舗のスタッフが認知できる(明らかに以前にご来店があると認められる)方にSPを出してきました。もちろんコア・ターゲットなので当たり前の選択ですね。
なべさんの適切な指導のもと総客数に対して32%のシェアを取れるまでになっています、しかも客単価も高い。立派です。おそらく「Beforeコロナ」であれば、ここをもっと深掘りすることで業績も安定したでしょう。
しかし、コロナ禍の煽りを受け、またそもそも夜だけ営業だったのでマクロ的に夜来店されなくなった基盤の20〜30%の客数と年に何回もあった「宴会需要」も毀損されてきました(トヨタのお膝元であるから致し方ないのですが)。
そもそもまず負けないようにするためには「TG01」を深掘りをすることが大切。返りの多いSPを束にして選んでもらうような工夫をしてスタッフが誰でもできるようにしつつ、会員に導き固定化する流れを創ること。
そして、この顧客に対してLTVの向上を目指し、少しでも年間回数を増やすために、お中元お歳暮その他のイベント、企画等を年間計画に入れ会員特典でプロモーションをする。ここまでが、深掘り。
問題はこの経験をチーム内で再現可能にしなければならない。ここが、「知」ではなく、カルチャー、そして行動が起こせるチームが負けないチーム。
さて、更なる成長が必要であれば(今の現状せざるを得ない)次に「TG02、03」と広げるのだが、ここで揺らぎが起こる。深掘りと探索は頭の使い方、モードが違うから。深掘りは「あるもの」に焦点を当てるが、探索は「イレギュラー」、「無いもの」にに焦点を充てなければならないから。人は無いもの、やっていないことを想像することは非常に難しいから。いつも意識的に「あいだ」に立つことが必要。
顧客化のルート、プロセスに入っていないお客様は誰なのだろうか、しかもできればリピートが効いているであろう顧客。そして、そして「TG01」のSPのレアケース。はまっていない刺さっていないものです。その上でその顧客にハマるものは何?だろうか?ここはチーム/組織の外を想像することが必要。
ここで一つ「ヨッチ」と「ダメッチ」の分岐点がくる。どうしても同じような振る舞いをしてしまうからだ。「TG01」のSPのコンテンツを作り上げたてきたプロセスを辿れば良いのだが(いわゆる再現性)今までの慣性で同じやり方ではなく、同じコンテンツをSPで勧めてしまったりする。再度述べるが必要なのは、やっていないこと、捨ててきたことは何か?という考え方。
始まったばかりですので、少し時間はかかるかもしれないが、そうすると、今のコンセプトの視座をあげて抽象度をあげて物事考えないと、自分は何をやっているのかわからなくなるかもしれない。焼肉屋と呼ばなくなるかもしれない。炭火焼き屋になるかもしれない。ひょっとしたら海鮮を売るかもしれない。あえてやりたくない、お値打ち感をクローズで打ち出すことになるかもしれない。ここがなべさんのチャレンジです。
が、心配してないんです。何しろ「TG01」で成果を上げた実績があり、まだ深掘りできる「余白」も残されているので。
次にぎんごんちゃん。のCAFE部門(和CAFEですね)のお話。お店のコア・ターゲットはお昼に2,000円以上使うことができる方がターゲットであり、主婦の方や、女子会に利用されています。もともと、モーニングもティータイムも営業していました。主なプロダクトは独自性の高い「おばんざい」と「デザート」そして見事、昼の部分が刺さったので、ここを基軸に他は切り捨て昼の顧客獲得に特化しました。
顧客化も徐々に上手くいく中で、様々な季節のイベント/プロモーションも積み上げてきました。メニューも、今ではCAFEであるにもかかわらず、「鮑」「伊勢海老」「シャトーブリアン」がオプションで出庫するようになりました。 今の季節で言えば「年末年始に使えるお歳暮企画(今年は返りが25%を超えたようです)」「恵方巻き」「ひな祭り用のお弁当」「桜の季節のお弁当」「蛤フェア」「初夏の行楽弁当」等々、初めから売れていたわけではないのですが、結果「お節」のように一月の平均売上をしのぐような結果が出るコンテンツを見出してきました。まだやれることがあるとすると、計画をあらかじめ立てて、精度を上げること。それは再現性を高めることです。そして顧客との対話の中でコンテンツを磨き上げること。
さて、ここまでは良いチームができてきた。そして更なる成長を望むのであれば、探索をしなければならない。つまり、「イレギュラー」、「無いもの」にに焦点を充てなければならない。ここが残念ながら進まない。なぜなら既存の顧客からヒントを導き出そうとしているから。ないものは何でしょうか?
まずは、ターゲット。それは昼に来店下さる顧客以外の顧客像です。しかもそれは、2,000円以上のランチに価値を感じていただけない方です。そして、本来その客層はディーナー客であるはずが思ったような成果が出ない。刺さらないわけです。CESには入らない。とは言えコア・コンテンツであるである「おばんざい」と「デザート」は評価が高いだけに上手く使いたい。
で必要なのは何か。外を見ることです。蝶ネクタイです。仮に「TG02」とすると、そのターゲットが価値を感じてくださるものは何か、そしてそのターゲットが利用してくださるとするとどんな仕掛けが必要か。
私は、それこそがコロナ禍でもヒットを続けた、アフタヌーンティーでありパルフェだと思うわけです。これは担当社員さんの言葉です。
「ランチ2,000円は高く感じるがアフタヌーンティー3,000円は安く感じる」
例えば「おばんざい」や独自性の高い稲荷寿司をサンドウィッチの替わりに、フレンチ菓子を和を意識したデザートを替わりに、プチフールを「和」を意識したピンチョス風の焼き菓子で提供したらどうだろうか。
「デザート」の強みを活かすために映えるフランベを上手く使ったInstagramの動画秒数に合わせたパルフェを提供したらどうだろうか。
要は生活者の目線が足りてないのです。それは外を向くことです。であれば、埋まっていないディナーの時間帯を埋めることより、今のターゲット以外に「TG02」にまずは価値を感じてもらえるものを開発し、そのターゲットが一番利用しやすい、土日のランチ以外の時間帯にマッチさせる。
まずは、ご来店してくださらないと始まらないわけですから。それをブリッジに使えば、ブランドとしての価値が上がり、そのうちにディナータイムも埋まるはずなのです。
そうすれば「ヤベッチ」から「ヨッチ」への流れができます。こんなストーリーを描くことができるチームができると良いのですが。
「# Town 」SAIJI-KI 089:勝ち筋について②
さて今回は勝ち筋という言葉を少し大きく捉えようと思います。その上でまずうってつけの書籍があります。以前紹介したと思うのですが「両利きの経営」をレビューします。なべさんもよく例にあげていただいていますが。
「両利き」とは何かというと一般的には「知の進化」「知の探索」をイメージされるのでしょうね。(早稲田大学の入山さんが考えられたとも聞いていますが)ただ、本質的に概念の理解にはは良いのですが、実際に実践しようとするとそうではないのではいかと思うわけです。
実際はオライリーさんがおっしゃるには「両利き」とは「知」を扱うものではない。リーダーの皆さんは「知の進化」「知の探索」だと考えない方が良いと言い切ってます。
そもそもオライリーさんが言いたかったのは「事業システム」をどうマネジメントするかが本質だということだと思います。要は個人のことではないわけです。むしろ我々の言葉では「チーム」をどうマネジメントするかというように捉えるべき。(書籍ではここが組織になるでしょうが)
改めて読み直してわかりやすく置き換えると、既存の利益構造の深掘り(ができるチーム/組織能力)と新たな利益の機会を探索(ができるチーム/組織能力)を両立させること。
になるはずで、オライリーさんや他の著者自体はなんと言っているかというと
・「現在の市場」と「未来の市場」の両方で競争する
・2つの異なるゲームをプレイする
・「守りの経営」と「攻めの経営」のバランスを作る
ことだそうです。
「# Town」語に置き換えれば
・「現在の顧客」と「新たな顧客」の両方を持つ
・二つの違う顧客創造をする
・「負けないこと」と「勝ちに行く」ことのバランスを作る
チームを創ること/リーダーを創ること。「あいだ」に立ち考え抜き実践すること、ですね。
両立するポイントは何かというとこれもオライリーさんの言葉を借りれば
「あえて非効率なことに取り組むこと」
が大切、つまり「# Town」語では「面倒なこと」にあえて取り組むことで「勝ち筋」が見えてくるということです。つまり競争力が生まれるということ。つまりそんなカルチャーを持ったニッチャーが「ヨッチ」だと言えるということ。
ではカルチャーとは何か、これもオライリーさんのコア・コンセプトですね。
カルチャーとは風土や社風ではなく、チーム/組織特有の「行動パターン」のことを言う
と言うわけです。逆ではない。しかしだからこそリーダーが必要なのだと私は思います。
そしてカルチャーの「場」はどこにあるのか、「パターン化」と 「非パターン化」の「あいだ」にある。一方で「パターン化」を目指し、片方で「非パターン化」を目指す。
実はSP/会員制度の論理的な裏付けはここにあるわけです。まず、目の前にある大切な資源としてのコアな顧客の来店を担保する「パターン」を見つけてプロモーションを効率化をし、一方で例外や当てはまらない顧客に焦点を充ててチャレンジする。一方は効率化だし、一方は非効率化で面倒なことです。
ある顧客をターゲットにし深掘りをしていくことで安定化はします。しかし、時まさにそれで届かない部分(損益構造上)が出てくる。であれば、両方を同時にやらなければならない。一方で再現性を作り、その再現性を持って新たな顧客を探索することになります。
さて次回は、なべさんとお店とぎんごんちゃん。のカフェ部門を例に取って話を進めていきましょう。
できれば次回のDO-JOに間に合うようにしたいとは思います。が、、、
# Town SAIJI-KI 088:勝ち筋について①
正月はいつも思考に耽ることが多いのだけど、今年は「勝ち筋」「生き筋」についてもっともっと追求していこうということで、そんな視座から物事を見直しています。「ヨッチ」「ダメッチ」「ヤベッチ」の話ですね。
さて、少し円高に振れている(今までと比べれば)ようですし、様々な日銀の担い手についてリークや金利に対する憶測が始まり、想定内の動きですね。しかしこればっかりはわかりません、どうなるか。場合によっては円安によって過去最高益の大手企業との綱引きかなと。
ただ、一部の方にはRINJIN-KAIでお話しましたが、もうそろそろ、マクロのうねりの落とし所が見え始めてきたような気がします。以後円がどうなろう(少し言い過ぎか)と、消費者物価指数がどうなろうが、最低時給がどうなろうが、総じて小規模事業者の様々な仕入れ価格やコストが下がる(元に戻る)ことは無い様に思えてきました(エネルギーコスト等の公共料金は別でしょうが)。
つまり、利益が出づらい状況というのは「With コロナ」や瞬間的に物の値上がりへのリアクションで考えるのはもうこれぐらいにしておいて、「Beforeコロナ」から続く会社そのものの内部構造の延長線上で考え直した方が現実的だということ。
おそらく、誰もが値上げしても値下げはしたくないはず。つまり、もうそろそろ値上げのトレンドも落ち着きこのままの状態が続くのではいかということ。言い方変えれば高止まりするんじゃないか。
結局、その上でまずは「負けないこと」結果「勝ち筋」は粗利の確保、もしくは粗利の向上なのではないか。つまり、元に戻って値上げができるかできないかということに尽きるのではないか。もしくはいつでも値上げができる様にしていくこと(もちろん価格全てのベースアップの話ではありません)。そして値上げできるトレンドやタイミングはもうそれほど長くない。むしろこの状況をプラスに捉えるべき。
根本的な課題は、それに見合う価値を提供できるのかにかかってきていると。値上げトレンドが落ち着いてくるとしたら、年賀状にも書いた通り、ポジションの奪い合いが終わり後出しは効かなくなる。
ブランディングの面から考えると粗利益=ブランド価値なわけで、大きく捉えれば利益=ブランドなわけでしょ。で、残り少ない時間ではあるけどこのご時世であるからこそ値上げのチャンスであり、一物多価により顧客を囲い込むチャンスであり、そしてそのことを前提(内部的にはそのこと自体がマネジメントの大義名分になり得る)さらに価値の創造に邁進することになる。ま、これは普通に思考実験すれば理解できることだと思うんです。
核はやはり最後の価値を高めるにはどうするか?です。今後どんな事例が必要かというと、「ダメッチ:死に筋」「ヤベッチ:死に筋になりかけている」「ヨッチ:勝ち筋」という視座で物事を知覚することではないかと思うわけです。
「ダメッチ」や「ヤベッチ」からの脱却。もしくは「ヨッチ」から「ヤベッチ」や「ダメッチ」への転落。この事例を皆さんとケースを討議していこうと思うわけです。
価値を生むには内部的にはデジタルで処理できないことに焦点が当たること(垂直展開)。外部的にはCEPをいかに増やせるか(水平展開)に関わっているか、でしょうね。何かこう書くとごくごく当たり前の話になってしまいますね。
年初めですので、今年はこんなことを考えていきましょうというお話です。